
子どもの矯正歯科治療の開始時期について
不正な歯並びには、出っ歯、受け口、乱杭、交叉咬合、開咬、空隙歯列などの種類があります。これらの歯並びは、歯が生えるにつれて発現してきますが、これに顎(あご)の成長などが関与することで、その発現時期は一律ではなくなります。たとえば、出っ歯は7歳ごろに気になることが多いようです。
受け口は、3歳の乳歯列の時にすでに発現している幼児もいますし、7歳のころに発現することもあります。また12~13歳で、急に顎の成長とともに起きることもあります。このような発現時期の違いと程度などから、治療の開始時期はそれぞれの歯並びで異なっているのです。
気になる時は、歯並びチェックを受けましょう。

大人の矯正治療
大人の矯正治療は、健康な歯があれば年齢に関係なく治療できます。治療には、以下のような子供の場合と異なる特徴があります。
- 治療には健康な歯であることが必要なので、長く使って傷んでいる場合や、歯周病などがある場合には、一般歯科にご紹介し連携して治療を進めることがあります。
- 大人では成長発育が終了しているので、子供と異なる治療方法をとるときがあります。たとえば、歯の乱杭の程度によっては、子どもでは成長発育を利用して非抜歯治療ができますが、大人では抜歯によりスペースを作り治療することがあります。また、うけ口などで著しい骨格の前後的なズレがあるとき、矯正治療と外科治療を併用して行なうことがあります。これは、口腔外科医と連携して治療を進めるものです。
気になる歯並びはどれですか
さまざまな装置で対応します
矯正装置には、取り外せるものと固定式のものがあります。取り外せる装置の代表的なものは、プレート装置、マウスピース装置、機能的矯正装置です。固定式のものは、マルチブラケット装置、歯科矯正アンカースクリュー、リンガルアーチ装置などです。治療する場合は、これらを単独あるいは併用して進めます。
小児矯正 受け口(一期治療)

治療前 年齢 7歳11ヶ月

治療後 年齢 8歳11ヶ月
下の歯が揺れている。反対咬合。
咬合性外傷
機能的矯正装置
10回
非抜歯
一期治療の治療費の目安は¥330,000~¥440,000円(税込)です。
自分で取りはずしができる装置なので、使用時間が少ないと治療期間が長引くときがあります。
小児矯正 出歯(一期治療+二期治療)

治療前 年齢 13歳1ヶ月

一期治療後 年齢 14歳5ヶ月

二期治療後 年齢 16歳5ヶ月
上の歯が出ている、口が閉じにくい。
上顎前突
マルチブラケット装置、固定式機能的装置
一期治療と二期治療が連続した症例です。
34回
非抜歯
一期治療+二期治療の目安は¥660,000~¥880,000円(税込)です。
歯根吸収の可能性があります。
永久歯列矯正 受け口

治療前 年齢 19歳5ヶ月

治療後 年齢 22歳5ヶ月
うけ口
下顎前突症例
マルチブラケット装置、急速拡大装置
30回
非抜歯
永久歯列矯正の目安は¥660,000~¥880,000円(税込)です。
歯根吸収を起こす可能性があります。
永久歯列矯正 開咬

治療前 年齢 16歳7ヶ月

治療後 年齢 18歳8ヶ月
歯が開いていて、うまく噛めない
開咬を伴う反対咬合
マルチブラケット装置、リンガルアーチ装置
24回
第三大臼歯
永久歯列矯正の目安は¥660,000~¥880,000円(税込)です。
外科手術を行わないので、オトガイ部の突出感が残ります。
歯根が吸収する場合があります。
永久歯列矯正 出歯

治療前 年齢 17歳3ヶ月

治療後 年齢 21歳1ヶ月
上の歯が出ていて唇が閉じにくい
上顎前突
歯科矯正用アンカースクリュー(デュアル・トップオートスクリュー)、マルチブラケット装置
43回
上顎左右第一小臼歯
永久歯列矯正の目安は¥660,000~¥880,000円(税込)です。
清掃が不足のとき、歯科矯正用アンカースクリューが脱落することがあります。歯根吸収を起こす可能性があります。
永久歯列矯正 マウスピース矯正

治療前 年齢 28歳2ヶ月

治療後 年齢 29歳11ヶ月
上前歯が出ている
軽度の上顎前突、叢生
マウスピース型(カスタムメイド)矯正(歯科)装置(アソアライナー)、マルチブラケット装置
1年8ヶ月
22回
下顎前歯
永久歯列矯正の目安は¥440,000~¥880,000円(税込)です。
自分で取りはずしができる装置なので、使用時間が少ないと治療期間が長引くときがあります。
- マウスピース矯正装置(アソアライナー)は、医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けていない未承認医療機器です。
- 装置は、アソインターナショナル社を介して入手しています。
- 国内にもマウスピース型矯正装置として薬機法の承認を受けているものは複数存在します。
- マウスピース型矯正歯科装置は完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、承認品を対象とする医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
- 情報の不足により、アソアライナーの諸外国における安全性等にかかわる情報は開示できません。今後リスク・副作用が報告される可能性があります。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。